相続の知恵袋Archives
相続手続きシリーズ㉒

遺言書を使った相続手続きの実務 「予備的遺言編」

先日、相談を受けたお客様からこんなお話しがありました。

「亡くなった叔母が遺言書を残してくれて、私、Aさん、Bさんの3名に遺産を分ける内容でした。ただ12年前に作成したもので、叔母より先にAさんが亡くなってしまっていて、この場合、どうなるのでしょうか」

このケースはAさんに分けるとした部分の遺言が無効になり、Aさんが受け取るはずだった遺産は宙に浮いた状態になります。
よく、Aさんの子どもがその分を受け取れるのではないかと言われる方がいらっしゃいますが、遺言の場合、自動的にそうなるわけではなく、その遺産の分け方を相続人全員で話し合い、その結果を遺産分割協議書という形にして、相続人全員が署名捺印のうえ、手続きをする必要があります。

このケースでは、法定相続人が全員で13名いましたので、大変な手間がかかることになりました。

このようなことになる前に、何か手を打つことはできなかったのでしょうか。

方法は2つあります。

  • 1 Aさんが亡くなった時点で、遺言書を書き換える。
  • 2 遺言書を作成した時点で「予備的遺言」を盛り込む。

高齢な遺言者の場合、1.は難しい場合もありますので、2.が有効と考えられます。

「予備的遺言」とは、「Aが遺言者の死亡以前に死亡したときは、Aに相続させるとした財産をAの子Cに相続させる」というように、あらかじめ予備的に定めておく遺言のことです。
この文言があれば、13名の相続人の同意を得ることなく、Aさんの子どもCさんがスムーズに受け取ることが可能でした。
また、この予備的遺言で遺産を分ける人は、Aさんの子ではなく、Aさんと関係のない人を指定することも可能です。

遺言書を作成してから相続発生までの間に何が起こるか誰にもわかりませんので、特に同年代の方に遺産を分ける遺言をする場合には、この予備的遺言は必ず入れておくべきでしょう。

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