遺言書がある場合には、実際どのような手続きをすることになるのでしょうか。
例えば「M銀行の預金を相続人のA、B、Cに3分の1ずつ相続させる」という内容だったとします。
この場合、「遺言執行者」が指定されていれば、遺言執行者XがM銀行所定の用紙に署名・捺印することでM銀行の預金を払い戻すことが可能です。
相続人A、B、Cの署名・捺印は原則不要です。その後、遺言執行者Xは、払い戻した預金をA、B、C3人に分配します。
遺言の内容を実現させる役割を担うのが「遺言執行者」です。
遺言執行者が指定されていない場合には、相続人全員が銀行所定の用紙に署名・捺印する必要があります。
せっかく遺言書を作成するなら、手続きがスムーズに進められるよう、あらかじめ遺言執行者を遺言書の中で指定しておいた方がいいでしょう。
遺言で指定されていない場合には、相続発生後に利害関係人が、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをして選任してもらうことができます。
遺言執行者は、未成年者と破産者以外でしたら、誰でもなることができます。相続人や受遺者でもなることができますし、法人もその目的に反しない限りなることができます。
ただし、遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有し、その義務を負うことから、専門的な知識を有する人や法人を慎重に選ぶべきでしょう。
または、相続人の1人を指定しておいて、実際の相続手続きを専門職に依頼する方法も可能です。
その場合は「遺言執行者は、本遺言の執行に関し、第三者にその任務を行わせることができる」というような復任権を遺言書に記載しておく必要があります。