「シニア婚」が増えているそうです。配偶者を亡くしたり、離婚を経験したりしたシニアが、新たな伴侶を見つけ、ともに第2の人生を歩んでいく・・・。人生100年時代を心豊かに暮らしていくために、こうした「シニア婚」は今後とも増えていくと思われます。
この「シニア婚」、前妻(夫)との間に子供がいる場合は、相続の問題に注意する必要があります。「親が亡くなったら相続人は自分だけ」と思っていた子供の前に、ある日突然、相続権を持つ「親の配偶者」が現れるわけで、「自分が亡くなった後、『配偶者』と子供は、もめずに遺産分割できるのだろうか?」と悩んだ末に、籍を入れない「事実婚」を選択する人もいるようです。
由美子さん(仮名60代女性)は、ご主人を亡くされた後、実家に戻り、父親とひとり息子の3人で暮らしていました(由美子さんの母親は既にご逝去)。そんな中、和志さん(仮名60代男性)と知り合い、シニア婚(入籍済み)。現在、由美子さんは実家を出て和志さんと新しい住まいで生活を始め、父親と息子(孫)は、引き続き実家で暮らしています。
最近、父親が体調を崩すことが増え、由美子さんは相続について考えるようになりました。由美子さんに兄弟姉妹はおらず、父親の相続人は自分一人だけ。ですから、もしものことがあっても相続はシンプルで、父親の財産は、すべて自分が引き継ぐことになります。「そこまでは良いとしても・・・」と由美子さんは考えます。
「持病を抱えていることもあり、私自身、現在の夫より早く亡くなるかも知れない。その場合、夫と息子は、スムーズに遺産分割の話し合いができるのだろうか・・・?」
このまま、自分が父親の財産を相続した場合、その先にある自分の時の相続を考えると心配になり、考え抜いた結果、父親が元気なうちに「実家の不動産を(娘の私ではなく)孫である息子に遺贈する」という内容の遺言を書いてもらってはどうか?と思いつきます。「息子は長年住んだ家に住み続けたいと思っていますし、ここさえ決まっていれば、後は大丈夫だと思うのですが・・・」とご相談に来られた由美子さん。
法定相続人ではない孫に財産を遺贈する場合、相続税額が1.2倍になってしまう(いわゆる2割加算)という問題がありますが、幸いなことに息子は父親と同居して一緒に暮らしており、「小規模宅地等の特例」の特定居住用宅地等の適用要件を満たしています(相続人だけではなく、受遺者にも適用可能)。実家の不動産の敷地の評価額(約5,000万円)を80%減できるため、相続税の申告は必要ですが、納税は発生しない見込みであることがわかりました。
早速、由美子さんは父親と協議の上、公正証書遺言を作成してもらうことになり、文案の作成等を私どもでサポートさせていただきました。
遺言書は円満な相続実現のための有効な手段ですが、遺言書の内容によって相続税額が大きく変わることもあり、相続税を視野に入れながら作成することが重要です。
新宿総合会計事務所が手掛ける遺言書作成サービス「道しるべ」は、相続専門税理士が窓口となって対応させていただきますので、税務相談をしながら遺言書を作成できます。