A)自筆証書遺言の見直しや相続人以外の者の貢献を考慮する制度が創設されます。
前月号でご紹介致しました、遺産相続などに関する民法改正案が7月6日の参院本会議で可決、成立しました。
この民法改正の主な目的は、相続が発生した際に、残された配偶者が自宅に住み続ける権利や生活費としての預貯金を確保するためのものです。
実際の施行は2年後(2020年7月)までの間としか決まっていません。
今回は前月号でご紹介していない内容についてご説明致します。
まずは、自筆証書遺言についてです。
現在、自筆証書遺言は偽造を防ぐために、全ての文章や日付、署名を自筆で書く必要があります。
そのため、遺言を作成する方の負担や誤字などによるトラブルが問題視されてきました。
そこで今回の改正により、自筆証書遺言に相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録についてはパソコンでの作成もできるようになります。
また、これまで自宅や金融機関などで保管されてきた自筆証書遺言ですが、今後は全国の法務局で保管できる制度が設けられます。
こうした改正で自筆証書遺言が使いやすいものとなり、遺言の普及へとつながることが期待されています。
次に、相続人以外の者の貢献を考慮する制度に関してです。
今回の改正において、相続人以外の親族(6親等以内の血族と3親等以内の血族の配偶者)が介護や看病に尽力した場合、相続する権利がなくても相続人に対して金銭を請求できる制度が創設されました。
これにより、長い間義理の親に対する介護などをしてきた、息子のお嫁さんの苦労も報われるようになります。
そして最後は、預貯金債権の仮払制度ですが、現行法では銀行などの金融機関は、遺産分割協議が成立するまで、亡くなられた方名義の預貯金の払戻や名義変更はできないことになっています。
従って、遺産分割協議が終了するまでの間、残された家族の生活費の確保や葬儀費用の支払いに支障をきたすケースが発生しています。
そうしたことから、今回、遺産分割協議が終わる前でも相続人の資金需要に対応できる仮払制度が創設され、亡くなられた方の預貯金の払戻を受けやすくなりました。
今回の相続分野における民法改正により、今後の相続が大きく変わりますので注意が必要です。