A. 最近の判例において財産評価基本通達による評価ではなく、不動産鑑定評価に基づく評価にすべきとの判決がなされた事例があります。
事例 死亡3年前に相続税節税のため銀行等からの借入金約10億円と自己資金を合わせて8億円と5億5千万円の2棟の不動産を取得しました。死亡後相続人はこの不動産と借入金全部を相続しました。
その後相続から9か月足らずのうちに5億5千万円の不動産を5億1千5百万円にて売却しました。死亡後2年が経過して税務調査があり、税務署は不動産の評価について不動産鑑定士による時価評価を行いました。その結果基本通達による評価額よりかなり高い鑑定評価額となったので、今回の不動産のあるべき評価額は不動産鑑定評価額であるとして相続税の計算をやり直す更正処分を行いました。
納税者は基本通達に従って不動産を適正に評価したのに否定されたことを不服として裁判を起こしましたが、最終的には税務署側の更正処分は適法と判断されました。この事例で考えなくてはならないことは相続税基本通達にて、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」という規定があるということです。
つまり財産評価が著しく不適当であれば鑑定評価額で評価するということです。それではどのような場合に著しく不適当となるのでしょうか。
①不動産の購入目的が通常の投資ではなく、相続税の負担軽減であった事。
②不動産の通達評価額と鑑定評価額の間に著しい乖離がある場合(今回は通達評価が鑑定評価額のおおよそ3割程度)
③相続後不動産を売買している事。
などです。
多額の借金で不動産を購入して相続税を節税するスキームはよく行われるものですが、あまりに目に余る節税は以前から問題視されていました。この判決により、より慎重な判断が納税者側に求められることとなりました。
最後に、全109回に及ぶ新宿総合会計事務所税務相談室も今回をもちまして終了となります。読者の皆様からのご意見や励ましのお言葉本当にありがとうございました。皆様の益々のご発展お祈り申し上げます。