人生100年時代といわれる中、ご自身の認知症対策として「家族信託」を検討される方が増えています。「家族信託」という言葉、新聞や雑誌で目にすることはありますが、「何となく難しそう・・・」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
簡単に言うと「信託」とは、財産を預けることで、まず、「預ける人」と「預かる人」が登場します。そしてもう一人、「財産から得られる利益を得る人」、この3人が家族の誰かで構成されている信託を「家族信託」と呼んでいます。
「預ける人」と「利益を得る人」は同じ人、また「預かる人」と「利益を得る人」が同じ人でも構いません。(「預ける人」と「預かる人」が同じでは信託になりません・・・)
詳細は割愛しますが税務上のメリットから、「預ける人」と「利益を得る人」が同一の信託が圧倒的に多く、実務では「預ける人」と「利益を得る人」が「親」・「預かる人」が「子」の信託がほとんどです。ご自身に置き換える場合には、まずこの条件で想定してみると理解しやすいと思います。「預かる人」の役割は財産の管理運用です。
活用例を紹介します。不動産賃貸業をしている70代のAさん、将来自分が認知症になった時の物件がどうなるか気がかりでした。日々の管理は勿論ですが、物件の老朽化もあり、10年後には建替えが必要となります。認知症になってしまうと、工事の依頼・建て替えなどの契約行為が出来なくなります。そこで、賃貸物件と預金を信託財産とし「利益を得る人」はAさん、「預かる人」を長男とする信託を締結しました。信託により、今まで通り家賃収入(利益)はAさんが受けますが、物件についての管理・運用は長男が行いますので、将来は長男の判断により建て替えの契約締結も可能となりました。
また、自宅を信託するケースもあります。住み慣れた自宅で可能な限り暮らし、施設に入居する際には自宅を売却して施設の利用料に充てたいと考えていたとしても、認知症が進んでしまうと自宅の売却が困難となります。自宅の売却ができないと、施設の入居費を子が負担することになりかねません。そこで子を「預かる人」として自宅を信託しておけば、子どもが売却できるようになりますので、親だけでなく子供にとってもメリットがあります。
信託を活用すると、後見制度では出来なかったことが可能となります。また、信託契約の内容を柔軟に設計することにより、認知症対策以外に遺言としても効果を持たせることもできるのです。ご興味のある方は一度専門家にご相談下さい。