令和3年度税制改正大綱で、相続税と贈与税の制度の改正について検討を進めるとの記述がありました。なぜ相続税と贈与税の制度の見直しをする必要があるのでしょうか?
そもそも相続税は富の再分配を目的の一つとしていますが、近年の高齢化に伴い、その再分配が遅れています。加えて相続人も高齢化していることから、相続による若年層への富の再分配がさらに進まなくなってしまっている状況にあります。この若年層への富の再分配を促進するために、贈与税の相続時精算課税制度が設けられましたが、より早く若年層に対する富の再分配を行わせることにより、経済の活性化を促していくということが、見直しの一つの目的と言えるでしょう。
また、暦年贈与を利用した相続税の節税方法がありますが、暦年贈与は相続税に比べ税率も高く、基礎控除額も110万円と少ないため、それほどの節税効果は得られないと思われます。ただし、富裕層に関しては暦年贈与を行うことにより、相続税と贈与税トータルで計算すると、かなりの節税効果を得られることがあります。このような富裕層による相続税の回避行為を是正することも検討課題となっています。
現在、日本では相続開始前3年以内に行われた贈与については、その贈与された財産を相続財産に加えることになっています。しかし、世界的に見ると、アメリカは一生涯、ドイツは10年、フランスは15年と、日本と比べると、遡る年数が極めて長くなっています。このように長いスパンで贈与財産を相続財産に加えることにより、税負担が一定化し、また相続税の回避行為の防止効果も得られることとなります。こうした観点から、贈与税と相続税の関係の見直しが必要となってきたようです。
暦年贈与と相続時精算課税制度を利用した相続税の節税をお考えの方も多くいらっしゃるおと思います。この相続税と贈与税の一体化は、早ければ2022年ごろから始まるのではないかとも言われております。新しい制度が始まる前に行った贈与について、その制度が適用されるかどうかはまた不明ですが、贈与を利用した相続税の節税をご検討の場合、早めに対処されたほうがいいかもしれません。