所有者不明土地(登記簿で所有者が判明しない土地や、所有者が判明しても所在が不明で連絡が付かない土地)の増加を抑制するため、令和3年4月の法改正により、相続登記が義務化されましたが、相続により土地の所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属されることを可能とする制度も新たに創設されました。
背景には、土地を相続したものの土地を手放したいと考える人が増加していることや、相続で土地を望まずに取得した所有者の負担感が増していることがあります。
申請できるのは、相続により土地を取得した者です。しかし対象の土地が次のいずれかに該当する場合は申請ができません。①建物の存する土地 ②担保権等の権利が設定されている土地 ③道路や他による使用が予定される土地 ④汚染されている土地 ⑤境界が明らかでない土地。申請には後述する負担金とは別に手数料を納付します。
また申請があった場合でも①崖があり管理に過分の費用を要するもの ②土地に通常の管理処分を阻害する車両や樹木がある土地 ③有体物が地下にある土地 ④隣地と争訟によらなければ管理処分ができない土地 ⑤そのほか、通常の管理又は処分をするにあたり過分の費用又は労力を要する土地など、費用・労力について個別で判断を要するものは不承認とされます。
要件審査を経て承認を受けた場合には、土地の性質に応じた標準的な管理費用の10年分の額を負担金として納付した後、土地が国庫に帰属されます。
(ご参考:現状の標準的な国有地の管理費用(10年分)は原野で約20万、市街地の宅地(200㎡)で約80万)
固定資産税の負担がわずかな地方の山林など、費用や手間をかけて土地を引き取ってもらう必要があるのかと考える方もいらっしゃると思いますが、費用がかかっても不要な土地を処分したいと思われる方には、メリットのある制度だと思います。申請手数料の額等、手続きの詳細は今後決定され2023年の施行が予定されています。