今月は私たち税理士が相続税申告業務を受任した場合、相続税の申告書が完成するまでどのような作業があるのか、簡単ではございますが、ご紹介させていただきます。
まず、戸籍や法定相続情報から相続人の数を確認し基礎控除額を算定し、相続人の中に障害者に該当する方や意思判断能力に問題のある方がいないか、生前に相続時精算課税の適用を受けている方がいないか、ヒアリングを行います。次に相続財産の把握と評価を行いますが、その後の分割や最終的な申告まで影響しますので評価額の算定はとりわけ慎重に行います。預貯金は、相続開始時点の残高証明書を確認し、次に相続開始前3年分位の通帳をお預りして取引履歴を一覧にします。相続開始の直前にお金が引き出されていないか、確認することは非常に重要で、まとまった資金の流出がある場合には相続人へ内容確認を実施します。
不動産については、まず国税庁のHPで路線価を調べます。次に謄本や公図・測量図をもとに簡易評価を行い、現地調査では測量や現況確認を行います。必要に応じて役所へ行き道路台帳や建築確認申請書を取得し、相続税評価額を算出します。
その他、生命保険金や未受領の入院保険がないか、車や家財など申告漏れがないように財産を洗い出していきます。
マイナスの財産についても、病院の領収書、固定資産税や住民税の領収書など、相続開始後にお支払いのものは提示いただき、葬儀費用は領収書及び明細書で内容をチェックします。葬儀費用の中に香典返しが含まれている場合には、香典返し分を除いた金額を葬儀費用に計上します。また、お布施やお車代は領収書が発行されない場合でも、日付・お支払先・金額のメモ書きで控除が可能ですのでご記載いただいています。
このように証憑類の確認、相続人への聞き取り、税法の要件チェック等を経て評価額を確定して財産目録が完成します。その後財産目録に基づいて、どなたが、どの財産を相続するかご相続人の方々で協議を行っていいただきますが、その間、分割方法のご相談はもちろん、分割パターン別の納税シミュレーション作成、二次相続の対策など、税務上のアドバイスを行っています。協議が纏まれば遺産分割協議書の作成押印を経て相続税の申告書が完成しますが、相続人の皆様全員が納得される申告を目指し、日々業務にあたっています。