「タワマン節税」という言葉はご存じでしょうか。今回はその概要と法改正について解説します。
タワーマンションの所有者は、これまで「時価(市場売買価格)」と相続税評価額との差を活用し、節税を実現してきました。特に富裕層の間でこの方法が注目され、国税庁のデータによると、マンションの市場価格と相続評価額の差が2倍以上のケースが65%を占めており、一戸建てと比べてもその差異は顕著です。
この状況を受けて、令和5年度の税制改正大綱にはマンションの相続税評価方法の見直しが盛り込まれました。新しい評価ルール案は以下の通りです。
① 相続税評価額が市場価格理論値の60%未満(乖離率1.67倍超)については60%に補正
② 評価水準60%~100%は補正しない(現行の相続税評価額×1.0)
③ 評価水準100%超のものは100%となるよう評価額を減額する
上記①にある「市場価格理論値」というのは「現行の相続税評価額 × 当該マンション一室の評価乖離率」から求められます。「(当該マンション一室の)評価乖離率」とは、マンションの「築年数」「総階数」「所在階」「敷地持分狭小度」を用いた非常に複雑な式から算出されます。聞きなれない言葉が並んでおり、これだけを読んで理解するのは非常に困難なことと思われます。
かなり大まかにお伝えすると『相続税評価額が、マンションの様々な要素を加味して新たに算出した「市場価格理論値」と比較して、60%を下回る場合は60%の価額にしましょう。60%以上であれば、これまで通りの相続税評価額にしましょう』という内容です。
簡易的な例として、相続税評価額を2,000万円、評価乖離率を5.0とした場合、以下の計算となります。
■計算式(見直し案)
現行の相続税評価額 × 当該マンション一室の評価乖離率×最低評価水準0.6(定数)
(理論的な市場価格)
・評価水準:20%(1÷5.0=0.2)>60%(上記の①に該当)
・2,000万円×5.0×0.6=6,000万円
以上の数値は現行の見直し案での概算であり、具体的な計算や実際の金額は異なってくる可能性はありますが、いずれにしても改正後の評価額はかなり引き上げられると考えられます。
現在もこの見直し案は検討中の状況ですが、この新しい評価ルールは2024年1月1日以降の相続等又は贈与に適用される、と国税庁の資料には記載されています。見直し案通りに改正された場合は、タワーマンションの相続税評価に大きな影響を及ぼすと予想されますので、今後いつから施行されるか、自身にどのような影響があるか、注視が必要です。