令和2年分の確定申告の概要については月報2月号でお伝えしたとおりですが、読者の方の中には、昨年は医療費がたくさんかかったなどの理由で、ご自身で確定申告をなさる方もいらっしゃるかもしれません。今回は給与や年金が主な収入で毎年確定申告しているわけではないという方が気をつけるべきポイントをいくつかご紹介いたします。
1.ワンストップ特例から確定申告への切替え
ふるさと納税として寄附を行った自治体が5団体以内であれば確定申告不要で控除を受けることができる「ワンストップ特例制度」が利用可能となっています。このワンストップ特例を申請した後に医療費控除などで確定申告をする場合には、ワンストップ特例分のふるさと納税も含めて申告をしなくてはなりません。申告書の作成にあたっては、収入、所得、各種控除金額(医療費控除、寄附金控除など)など該当する項目をすべて記載する必要がありますのでご注意下さい。
2.株式の配当に対する課税方式の選択
平成29年の税制改正により、上場株式の配当所得や特定⼝座内(源泉徴収あり)の譲渡所得等について、所得税と個⼈住⺠税とで異なる課税⽅式を選択できることになっています。この選択方式により、税務上、有利・不利が⽣じるケースもあります。例えば、課税総所得金額が900万円以下の場合(上場株式等の譲渡損失なし)であれば、所得税は「総合課税」、個人住民税は「申告不要制度」を選択するパターンが有利となります。
上場株式等の譲渡損失がある場合ならば、申告分離課税の選択により配当所得との損益通算の税務メリットがありますが、国⺠健康保険などへの影響を考慮して、個⼈住⺠税については申告不要制度を選択することで保険料を圧縮するという手もあります。
所得税と個人住民税とで異なる課税方式を選択する場合、「納税通知書の送達日(おおむね5月下旬頃)」までに、各地方自治体に対し、個人住民税の申告書を提出することが必要です。ただし来年度からは、上述した異なる課税方式を選択する場合、確定申告の提出のみで申告手続きが完結できるよう個人住民税に関する附記事項が確定申告書に追加されるので、別途個人住民税の申告書を提出するという手間はなくなります。
3.副業の所得にも注意
働き方改革の一環として政策的に進められていた副業は、在宅勤務の定着とともに一般化しつつあります。給与所得者で、副業による所得が20万円以下であれば所得税の申告義務はありません。しかし副業所得が20万円以下であっても医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)などを受けようとするときには、副業による所得を除くことはできませんのでご注意下さい。昨今では、ネット通販・オークション、アフィリエイト、動画配信、暗号資産などインターネットを利用して手軽に収入を得られる機会も増えています。これらインターネットによる取引については、将来的に各プラットフォーマーから税務当局への情報提供がなされることを前提に正しい申告に努めましょう。