令和3年度税制改正により、賃上げ税制が改正されました。賃上げ税制とは、青色申告書を提出している事業者が賃上げ等を行った場合に、その賃上げの一部を税額控除ができるという優遇措置です。
改正前の賃上げ税制は、(1)「所得拡大促進税制(中小企業向け)」と(2)「賃上げ・投資促進税制(中堅・大企業向け)」からなり、改正後、「所得拡大促進税制」は適用要件のハードルが下がることとなり、「賃上げ・投資促進税制」は新卒・中途採用による人材獲得に主眼をおいた「人材確保等促進税制」へと改組されました。
中小企業者等(※)に該当する法人については、(1)(2)の制度とも適用可能(ただし重複適用は不可)となります。
※中小企業者等とは資本金または出資金の額が1億円以下(ただし発行済株式等の額の一定割合を大規模法人に所有されていないこと)で、従業者数が1000人以下である法人をいいます。
(1)所得拡大促進税制
従来の所得拡大促進税制において、適用を受けるためには、継続雇用者の賃上げと企業全体の給与の賃上げの2つの要件がありました。改正により簡素化され、賃上げ要件として求められるのは、企業全体の給与が前年度比で1.5%以上増加していることのみとなりました。この場合には企業全体の給与の増加額の15%の税額控除を受けることができます。さらに上乗せ措置として企業全体の給与が前年度比で2.5%以上増加しており、次のいずれかを満たす場合には、企業全体の給与の増加額の25%の税額控除を受けることができます。
Ⅰ教育訓練費が対前年比10%以上増加
Ⅱ経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上が確実になされていること
なお、税額の控除上限は法人税額の20%となります(次項の人材確保等促進税制においても同様)。
(2)人材確保等促進税制
従来の賃上げ・投資促進税制において、適用を受けるためには、継続雇用者の賃上げと国内設備投資の2つの要件がありました。改正により国内設備投資の要件が撤廃され、企業全体の給与が前年度を上回っていること、新規雇用者(新卒・中途)への給与支給額が前年度より2%以上増加していることの2つが適用要件となりました。この場合には新規雇用者への給与支給額の15%の税額控除を受けることができます。上乗せ措置として、教育訓練費が前年度より20%以上増加している場合には20%の税額控除となります。
いずれの改正も、令和3年4月1日以降開始事業年度(個人事業主は令和4年分)から適用開始となります。